研究概要 |
Racインスリン作用における役割については、dominant negativeの働きを有するAsn^<17>Racをアデノウィルスベクターに組み込んで、3T3-L1脂肪細胞に感染させ、この蛋白を発現させ検討した。この細胞において各種のインスリン作用を測定した結果、dominant negative Racはインスリンによる膜ラッフリングの形成を阻害したが、インスリンによる糖輸送の活性化は阻害しなかった。従って、Racはインスリンによる糖輸送の活性化には関与していないと結論された。次にPI-3-キナーゼの下流に位置するセリン・スレオニンキナーゼであるAktについて検討した。Aktの活性化には2種類の機構が働いていることが想定されている。すなわち、PHドメインにPI(3,4)2燐酸が結合する活性化とAkt-キナーゼによるAktの燐酸化である。そこで我々は3種類の蛋白変異Aktを作製した。(1)AktのPHドメインのみ、(2)Aktのキナーゼ活性の消失した変異体(179番目のリジンをアルギニンに置換)(3)Aktの燐酸化部位である308番目のスレオニンをアラニンに同時に473番目のセリンをアラニンに置換した変異体、以上の3種の変異体をアデノウェルスベクターを用いて各種の細胞で発現した。インスリン作用がこれらの蛋白の発現でどのように変化するかは今後の検討課題である。更に同じくPI-キナーゼの下流に位置すると考えられているPKCλについても同様の検討を加えた。PKCλのキナーゼ欠損変異体を作製して、アデノウィルスベクターに組み込んだ。これによりこの変異PKCλを各種細胞で発現しうるようになった。インスリン作用がこれらの蛋白の発現でどのように変化するかは今後の検討課題である。
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