研究概要 |
CD34はヒト造血幹細胞のマーカーとして知られている細胞表面分子である。マウスのCD34遺伝子を利用して確立されたマウスCD34に対するモノクローナル抗体を使い詳細な解析を行ったところ、マウスにおいては骨髄有核細胞中2万5000個に一個の頻度で存在するCD34陰性c-kit陽性Sca-1陽性分化抗原陰性の分画に造血幹細胞が高濃度で存在することを明らかになった。さらに、このようにして純化した造血幹細胞一個を移入することにより、致死量放射線照射したマウスの骨髄を1年以上にわたって再建できることを示し、造血幹細胞の「多能性」と「自己複製能」を直接的に証明した。また一個の純化した細胞を移植されたレシピエントの約20%で長期骨髄再建が見られたということは、移植細胞が脾臓や骨髄の造血微小環境に到達して造血を始めることができる確率(seeding efficiency)が少なくとも20%以上であることを示していると同時に、筆者等が分離してきたCD34+,c-Kit+,Sca-1+,Lin-細胞がほぼ造血幹細胞そのものであることを強く示唆している。一方で、CD34陽性c-kit陽性Sca-1陽性分化抗原陰性の分画にはリンパ球系、骨髄球系の両方に分化できる自己複製能を持たない、いわゆる造血前駆細胞が含まれていると考えられ、CD34の発現により造血幹細胞と造血前駆細胞を分離することが可能になった。
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