研究概要 |
(実験1)TNFαアンチセンスによる肝虚血再潅流障害の改善 BNラット肝移植モデルにおいて、摘出肝の門脈よりTNFαmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(18mer)を封入したHVJ-liposomeを導入した。乳酸加リンゲル氏液に6時間冷保存後、同所性肝移植を行い以下の知見を得た。 アンチセンス導入により移植4時間後のAST,ALT,LDH値の低下と1週間生存率の向上(20%が70%に)を確認した。再潅流後の移植肝組織をICAM-1,Tissue Factorの抗体を用いて免疫組織染色したところ、アンチセンス導入によりそれらの発現低下を認めた。電子顕微鏡にて移植肝を観察したところ、Vector群では異物を貧食したKupffer細胞の異物貧食、類同内皮の破壊、肝細胞villiの類洞への露出等の所見がほぼ消失した。ELISA法にて測定した血中TNFα値はアンチセンス導入群により著明に低下した。 (実験2)NF-κ B decoyによる肝虚血再潅流障害の改善 種々のサイトカインの転写を制御する転写因子NF-κ Bに注目し、そのdecoy DNAであるNF-κ B decoyがHVJ-liposomeをvectorとして移植肝に導入できる事を確認した。今後はNF-κ B decoyの遺伝子導入により複数のサイトカインの発現を同時に抑制し、各種サイトカインの濃度をELISA法で、またmRNAの動態をNorthern blottingにて検討する予定である。
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