研究概要 |
肝移植後虚血再灌流傷害はグラフトのviabilityを低下させる最も重要な因子で、Kupffer細胞が産生するTNFαなどの炎症性サイトカインが主因の一つと考えられる。BNラット肝移植モデルにおいて、摘出肝の門脈門脈よりTNFαmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(18mer)を封入したHVJ-liposomeを導入した。乳酸加リンゲル液に6時間冷保存後、同所性肝移植を行い以下の知見を得た。 アンチセンス導入により移植後4時間後のAST,ALT,LDH値の低下と1週間生存率の向上を確認した。再灌流後の移植肝組織をICAM-1,Tissue Factorの抗体を用いて免疫染色したところ、アンチセンス導入によりそれらの発現低下を認めた。電子顕微鏡にて移植肝を観察したところ、Vector群では異物を貪食したKupffer細胞の異物貪食、類洞内皮の破壊、肝細胞villiの類洞への露出などの所見が消失した。ELISA法にて測定した血中TNFα値はアンチセンス導入にて著明に低下した。 この安全かつ効果的にKupffer細胞にアンチセンス導入が可能なHVJ-liposomeを用いた方法は、炎症性サイトカインのTNFαを低下させ、肝移植後虚血再灌流傷害の効果的な治療法であると考えられた。
|