研究概要 |
(1)ヌードマウスにおけるヒト大腸癌由来の高頻度および低頻度肝転移大腸癌株を用いて、我々の開発したinvasion assay(Cancer Res, 1994)を繰り返すことで、それぞれの高浸潤および低浸潤大腸癌細胞株を作成した。さらに,作成した4種類の大腸癌株のinvasion-MTT assayで測定した基底膜浸潤能の程度とin vivo(ヌードマウス)における肝転移能を同所性移植で比較検討した結果,浸潤能の高低と肝転移能の程度は必ずしも一致しなかった。このことは肝での転移形成に癌細胞の肝類洞内皮細胞への接着能が関与していることを示唆している。(2)血管新生活性をもつチミジンホスホリラーゼは食道癌,胃癌,大腸癌などの広範な固形腫瘍において高い活性が認められ,予後との関連性が見いだされた(J Natl Cancer Inst,1996)。そこで,これら4種類の大腸癌株の基底膜浸潤能へのチミジンホスホリラーゼの関与およびその程度について、マイクロプレートアッセイシステム(今回の科研費で購入)を用いてチミジンホスホリラーゼ抗体と阻害剤の影響を検討中である。(3)肝転移癌細胞株の肝転移成立機構のin vivoモデルとして,ヌードマウス肝類洞内皮細胞およびクッパー細胞との細胞相互作用における超微形態学的変化を透過型・走査型電顕で観察中である。さらに,in vitroの実験モデル作成のため肝類洞内皮細胞とクッパー細胞の分離培養を行っている。(4)また,これら大腸癌株でのE-カドヘリン・カテニンの発現では高浸潤大腸癌細胞は低浸潤大腸癌細胞に比べて発現低下を示し,浸潤能とE-カドヘリン・カテニンシステムとの関連性を認めた。
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