研究概要 |
(1)ヒト大腸癌由来の高頻度および低頻度肝転移大腸癌株を用いて、カドヘリン-カテニン系の発現と浸潤能との関連性を検討した。浸潤のメカニズムに接着因子であるカドヘリン-カテニン系が強く関連していることを昨年報告したが、さらにα-カテニンおよびβ-カテニンの発現減弱と浸潤能が強く相関した。(2)血管新生活性をもつチミジンホスホリラーゼは消化器癌において高い活性が認められ,かつチミジンホスホリラーゼの発現と予後との関連性を報告したが、そのメカニズムとしてチミジンホスホリラーゼをトランスフェクトした細胞(発現株)とその親細胞(非発現株)とで浸潤能や運動能を検討したところ,チミジンホスホリラーゼは血管新生を通じてin vivoでの増殖能亢進, in vitroの検討では運動能の亢進や、アポトーシスを回避することが判明した。(3)肝転移癌細胞株の肝転移成立機構のin vivoモデルとして、ヌードマウス肝類洞内皮細胞およびクッパー細胞との細胞相互作用における超微形態学的変化を透過型・走査型電顕で観察したところ,低転移株に比べて高転移株では肝類洞内皮細胞への接着数が有意に上昇することを昨年報告した。そこで、時間との関連を調べたところ、癌細胞が肝類洞内に侵入して30分以内には接着が完了し、1時間以内には基底膜下に侵入している癌細胞の存在を確認した。現在その侵入様式を検索中である。(4)臨床研究としてPCRによるリンパ節のmicro metastasisおよび流血中の癌細胞の同定を試みている。蓄積されてきた症例での検討から,リンパ節micro metastasisと予後との関連性が示唆されてきた。また,流血中癌細胞の同定は血行性転移との関連性、さらに手術や麻酔などによる癌細胞の遊離促進が強く示唆された。現在、サイトカインなどとの関連性を検索中である。
|