研究概要 |
a.Fibrinogen(Fbg)の遺伝性変異の解析:Fbg Caracas IIの電顕学的分析で見出されたFbnゲル構造の異常,およびFbg Kurashiki Iで重合障害の分子機作を解明して投稿していた2つの論文が印刷された(業績目録参照).Fbnの重合障害を主徴とするFbg Niigataで糖付加構造を作る新変異型(Bβ-Asn 160→SerとAsn-X-Serの配列形成)を同定した.この変異はヘリックス構造の中央に在ることから,重合障害への余剰糖鎖の関与の模様を次年度に分析の予定である(第16回国際血栓止血学会,Florenceで報告の予定).また,反復する一過性虚血発作で黒内障と診断された患者に見出されたFbg KumamotoでFbnゲルへのthrombinの親和性が著しく低いことが判明した.この為,thrombinを吸着限局化して新たなFbn形成を抑制する機構が障害され,易血栓性に陥っているものと結論し,Thrombosis and Haemostasisに投稿中である.ドイツから解析を依頼されているFbg MarburgではAα鎖150残基の欠如の為,変異Aα鎖にalbumin1分子がdisulfide結合し,これが活性型第XIII因子に触媒されて他のFbnのγ鎖とisopeptide結合による架橋を形成すること,この為Fbn立体構造が変化し線溶酵素plasminに抵抗することが判明した.この患者で観察された出血と血栓形成という二律背反する現象の一部はこの事実に由るものと理解された.この成績は国際血栓止血学会(既出)で報告の予定で,目下投稿を準備中である. b.接着分子としてのFbnの分子機作:線維芽細胞はFbn培地上で接着,進展するが,この時,従来知られていたvitronectin受容体(αvβ3)のみならずβ1-classの受容体を発現する事を見出し,J.Biol.Chem.に投稿,受理された.Fbg→Fbn転換により,接着分子としての活性中心をなす2箇所のRGD配列が露呈されることも判明したことから,血栓形成時に血中に出現するFbn-Fbg複合体上での線維芽細胞の接着伸展を解析し,投稿準備中である.この解析に自家製の抗体JF-43(Blood 88:2109,1996)が威力を発揮した.
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