研究概要 |
1.遺伝性異常fibrinogen(Fbg)の解析:初年度から継続している10余家系での分析から,幾つかの新知見が得られたので報告した(研究発表を参照).特記すべき分子として,術後の出血,血栓症,創傷治癒不全というFbgの生理機能に関わる三大徴候をすべて示したFbg Marburg(ドイツからの依頼.Aα鎖C末150残基の欠失と,欠失によりジスルフィド結合の相手を失ったAα Cys 442への血清albumin(Alb)のジスルフィド結合)で結合Albが活性型XIII因子(XIIIa)によって別のFbn分子のγ鎖に架橋結合することが判明した.血清AlbがXIIIaの基質となることは新知見であり,プラスミンに対する強い抵抗性と共に血栓性素因の一つとして報告した(研究発表5).別の異常分子Fbg Niigataではアミノ酸の点変異により糖付加構造が新たに形成され,Bβ-158Asnに2股ソケット構築をもつ糖鎖が同定された.この構造変異はBβ鎖の紐状構造内に存在し,一次重合反応基とは空間的に離れて位置している.この成績を国際血栓止血学会(1997年6月,Florence,Italy)で報告した.これらを含む複数の異常分子におけるFbgおよびFbn線維の超微細構造の電顕学的分析を米国,Wisconsin大のMosesson教授と進めている所で,情報が得られつつある.中でもMarburg Fbn塊は極めて細く且つ分岐に富む緊密な網状構造をとり,水透過性に乏しい.先述のプラスミンへの抵抗性と併せて,これらの所見は血栓性素因に寄与しているものと思われる.又,緊密な網状構造は線維芽細胞の侵入と増殖を妨げ,創傷治癒不全に関連するものと推察される. 2.接着分子としてのFbgとFbn:Fbgのもつ接着活性中心はFbnへの転換により初めて露呈されること,この時,線維芽細胞は新たにβ_1インテグリンを発動してこれと結合すつことが判明した(研究発表3).又,Fbg γ鎖(373-377)断片に新しい接着活性中心を見出した.
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