研究概要 |
大腸癌細胞株において、癌抑制遺伝子p53,Rb,DCC,APC、Apoptosis関連遺伝子Bcl-2,Bax,Bcl-X_L,Bcl-X_S,Bak,Bad、細胞周期調節因子Cdk Inhibitor p21,p16,p27、Cdk2,4,6、Cyclin A,D1,D2,D3,Eの発現をWestern Blottingを用いて解析した。p53の発現は約80%に認められた。p53遺伝子解析から、Mutant p53蛋白を発現している細胞株とWild-type p53蛋白を発現している細胞株があることが示唆された。DCCの発現はわずか2種類の細胞株にのみ認められたが、これらに発現しているDCC蛋白は本来より小さい分子量を持つ、今までに報告されていないものであった。APCの発現は全ての細胞株で認められたが、いずれも本来より小さい分子量を持つVariant APC蛋白であり、APC遺伝子変異を反映していると考えられる。 Bcl-2の発現は、大腸癌細胞株の約20%に認められた。p53、Bcl-2、Baxの発現の間に明らかな相関は認められなかった。Bax、Bcl-X_L、Bcl-X_S、Bak、Badの発現は、ほとんど全ての細胞株で認められたが、その発現量には細胞株の間で相違が認められた。大腸癌細胞株における化学療法剤5-FUに対する感受性とApoptosisを解析し、5-FUに対する感受性にはp53-dependentなApoptosisが関与していることが示唆された。さらに、直腸癌に対する放射線療法感受性とp53、Bcl-2、p21の発現の相関を検討し、p53(+)/p21(-)の腫瘍は放射線療法に対して抵抗性を示し、p53(-)/p21(+)の腫瘍は放射線療法に対して良好な感受性を示すことが明らかになった。化学療法、放射線療法に対する感受性を規定する因子として、p53が重要であると考えられる。
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