研究概要 |
1)原発性肺癌における血管密度(vascularity)の評価を血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)の発現を中心に検討し,VEGFの高発現群は低発現群に比し腫瘍内の新生血管密度が有意に高く,さらに1期治癒切除例をもとに検討した結果,再発との相関性が明らかとなった.また,VEGF121のmRNA発現レベルを定量的RT-PCRにて検討した結果,VEGF121の発現性が肺癌の予後と相関することが判明した.ヌードマウスにヒト腫瘍(HT1080)細胞を皮下移植した転移モデル系において,血管新生阻害剤TNP470が血行性遠隔転移のみならずリンパ節転移をも抑制しうることが判明した.現在,さらに血管新生因子とリンパ節転移との相関性につき研究を継続中である. 2)アポトーシス誘導因子下でのp53遺伝子の転写活化に対するbcl-2の影響に関する実験的検討にて,p53遺伝子の転写活性はアポトーシス誘導因子により増強すること,bcl-2はその転写活性を制御するが,それは-70〜-46bpまでのp53の特定プロモーター領域への作用によることが明らかとなった.また,原発性非小細胞肺癌切除例におけるp53およびbcl-2の発現の検討により,扁平上皮癌におけるbcl-2蛋白発現,腺癌におけるp53蛋白発現はともに有用な予後因子となりうることが判明した. 3)生体内における膜型マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MT-MMP-1)の発現およびその制御が癌細胞の浸潤および転移に及ぼす影響をマウスを用いた転移実験モデルで検討した結果,遺伝子導入により一過性に発現させたMT-MMP-1が活性化MT-MMP-2を通じて癌細胞の実験的転移能,浸潤能を亢進させること,またその制御が転移の制御に繋がりえることが判明した.
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