研究概要 |
初年度は,誘発脳磁界の検査項目を拡大した.体性感覚においては四肢の末梢神経刺激に加え泌尿生殖器や舌に対する脳の知覚野を同定した.聴覚刺激においては音節刺激に対する反応を捉えた.また舌への味覚刺激による脳磁界を計測し,信号源を島と弁蓋部の境界付近に見いだした.ついで機能的MRIにおいても,皮膚の接触感覚,皮膚の痛覚,手指の運動などの負荷条件下における脳活動を3次元的に示した.以上の機能マッピング情報は,MRI解剖画像上に表示することが可能になった. 第2年度は,手術中の電気生理学的手法を用いて,脳磁図・機能的MRIの結果を比較した.開頭術中の正中神経刺激体性感覚誘発電位を用いた中心溝同定では中心溝を同定することが困難な場合もあったが,脳磁図はすべての症例において中心溝同定が可能であり,有用であった.術中脳表電気刺激では,脳磁図の信号源推定精度を確認することができた.術前に脳磁図の信号源位置をMRI脳表画像と静脈画像に重ね会わせて処理する事により,術中の脳表・脳回の認識がきわめて容易になった.また機能的MRIにおいては,Echo Planner法を導入し時間解像度を向上させることができた.第2年度は手の体性感覚,舌の運動,唇の運動,パターン反転視覚刺激,純音刺激においても脳機能マッピングを行えた.同名半盲を有するてんかん症例においては,全視野視覚刺激によって健側後頭葉の一側反応の出現を確認できた. まとめとして脳磁図と機能的MRIの結果を比較した.時空間的にピンポイントの活動に関しては脳磁図の信号源推定が勝っており,一方的時空間的な脳活動のひろがりに関しては,機能的MRIが有利であった.臨床的には両者の併用が有用と考えられた。
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