研究課題/領域番号 |
08407047
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五嶋 孝博 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (20272544)
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研究分担者 |
税田 和夫 自治医科大学, 附属病院, 講師 (20241995)
中村 耕三 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60126133)
黒川 高秀 東京大学, 医学部・附属病院, 名誉教授 (90010298)
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キーワード | 脊髄 / 中枢神経 / 神経解剖学 / 神経生理学 / ネコ / 可塑性 / 脊髄損傷 / 脊髄症 |
研究概要 |
脊髄の可塑性を起こしうる脊髄の神経回路網を明らかにすべく、第6頚髄の運動核に投射する第8頚髄の介在ニューロンを組織学的並びに電気生理学的に同定し、これらのニューロンへの入出力様式を各脊髄運動下行路と前肢末梢神経を電気刺激することで調べた。その結果、これまでに同定されていた脊髄の神経回路網の他に、高い刺激閾値の神経回路網が多数であることが明らかとなり、さらに、神経に種類により一定の入出力様式をもつことが明らかとなった。これらの神経回路網が脊髄の可塑性に大きく関わっていることが推定された。そこで、脊髄の可塑性を誘導する因子を解明すべく2種類の研究を行った。まず、その前段階として、第6頚髄を急性圧迫することで下行性伝導性脊髄誘発電位と下行性分節性脊髄誘発電位に及ぼす影響を調べたところ、後者の方がはるかに圧迫の影響を受けやすいことが分かった。この結果、脊髄圧迫の効果は諸家がこれまでに傍証しているように血流の影響をうけることが示唆された。そこで脊髄の可塑性を誘導する因子として、血流の改善が有効であると考えた。血管を拡張して血流を増大させるプロスタグランディンE1の投与が脊髄急性圧迫ネコにおける脊髄誘発電位の回復に有効であろうという仮設を動物モデルで検証したところ、一部の個体では血流改善が有効であることが証明された。しかし、血流改善が有効でない個体もあり、脊髄の可塑性を誘導するにはその他の要因としてニューロンのアポトーシスを阻害することが重要であると考えた。アポトーシスを阻害する遺伝子を脊髄切断を行ったラットにアデノウイルススベクターを用いて局所投与したところ、これらのラットでは後肢の運動の回復がみられ、この現象を脊髄誘発電位を用いて観察したところ、本来の錐体路とは別の神経系で運動回復が起こっていることが証明された。
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