Wistar系ラットを用い、坐骨神経切断モデルを作製した。坐骨神経切断後神経縫合を行い、5、7、14日後にpinch test陽性部位にて神経再切断を施行し、再生軸索先端より逆行性神経tracerであるFluoro-Giodを取り込ませた。Fluoro-Goldは術後5、7、14日の何れにおいても運動神経の母細胞である脊髄前角細胞よりも知覚神経の母細胞である後根神経節細胞に有意に多く認められた。この結果から末梢神経切断後には知覚神経が優位且つ早期に再生を開始すると考えられた。また坐骨神経切断後のGAP-43の発現を免疫組織化学的に検索したところ、後根神経節では切断後7日目にGAP-43が発現したのに対し脊髄前角ではGAP-43切断後14日目から徐々に増加していた。このことからも神経切断後には知覚神経の再生が運動神経のそれに先行すると考えられた。この現象は切断部位から知覚・運動神経の母細胞である後根神経節細胞・脊髄前角細胞までの距離の差のため:即ち切断部位までの解剖学的距離は後根神経節の方が短いためではないかと考えられるが、これらの結果は運動神経と知覚神経の本質的な差によるものかもしれない。そこで我々は知覚神経の再生に関してその神経を構成する髄節間に差があるか否かを比較・検討した.その結果、知覚神経の中でも下位後根神経節に由来する神経線維ほどより早期に再生することを確認した。この結果から下位神経節になるほど再生軸索先端から母細胞までの距離が短く、再生に必要な細胞骨格が細胞体から再生軸索先端へより早く輸送されるため、より早期に再生する可能性が示唆された。
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