研究概要 |
本年度は、白血球及び内皮細胞に発現する接着分子の発現と麻酔薬の影響について検討した.前年度では、白血球の分離はFicolhypaque液による密度遠心勾配法により行ったが、flow cytometer測定時に頻回に回路が閉塞しその信頼できる結果かどうか問題があった.そこで、この方法をやめ全血法を用いて、再度、接着分子の発現に及ぼす麻酔薬の影響を検討した.ヘパリンNaで静脈血を採血し、1mlずつ試験管に分注し5.6%炭酸ガス培養器(37°C)中で0,30,60,90,120分毎に100mulの血液を採取し、CD11b(Macl)及びCD62L(L-selectin)の測定を行った.CD62Lの発現は60分まで変化しなかったが,90分以降は減少した.CD11bの発現は時間経過とともに増大した.このことは血液中に存在する何らかの物質により白血球が時間経過とともに活性化されたことを意味する.そこで、CD62Lの発現が保持される60分の時点での両接着分子の発現を非刺激群、FMLP(10^<-7>M)PMA(10^<-9>M)刺激群でketamie(KT:10^<-5>〜10^<-3>M)及びthiopental(TP:10^<-5>〜10^<-3>M)の影響をみた.CD62Lの発現に関し、無処置血液では60分でのCD62Lの発現は0分の値と比べて変化はなかった(control).KT10^<-4>,10^<-3>M)はCD62Lの発現を増強したがTPは影響しなかった.一方、FMLP,PMA処置によりCD62Lの発現は減少した.KT及びTPはCD62L発現減少を抑制できなかったが、PMAによる減少はいずれも10^<-4>と10^<-3>Mで抑制した.CD11bの非刺激血液での60分の発現は0分に比べて有意に増強していた.非刺激群、FMLP群ではKTは10^<-4>,10^<-3>M、TPは10^<-5>〜10^<-3>Mでその発現を抑制した.PMA刺激に対しては、KTは10^<-3>M、TPは10^<-4>、10^<-3>Mで抑制が見られた.このことから、KTに関しては比較的高濃度、TPは臨床濃度で白血球の活性化を抑制することがわかった.以上の結果より、脳虚血後の白血球による炎症の波及びTPは有効であることが示唆される.現在、ラットを用いて脳血管内皮細胞で低酸素後2時間に発現するICAM-1への麻酔薬の影響を検討中である.一方、動物を低酸素状態にした時、脳の酸素化状態をと脳血流がどのように捉えられるかを近赤外線分光モニターとレーザートップラーを用いてそのモデルを作成中である.さらに、このモデルを用いてICAM-1の発現に及ぼす麻酔薬の影響を検討する予定である.
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