研究概要 |
平成10年度は,ClCR(Ca-induced Ca release)速度の測定を行ったのは18例であった.17例は筋生検後クール宅急便を利用して摘出された骨格筋を輸送され,1例は当病院に入院後に筋生検を行った.この18例の筋生検理由の内訳は,高CPK血症7例(家族性高CPK血症2例),術後悪性高熱症3例,悪性高熱症の家族歴3例,亜型悪性高熱症発症2例,筋ジストロフィーおよびその家族歴3例であった.CICR速度の亢進が認められたのは2例で,亜型悪性高熱症1例,家族性高CPK血症1例であった.悪性高熱症劇症型の症例集計は続けており,総計345例で1990年以降の死亡率は昨年度と同様14.6%であった. カルシウム画像解析装置によるCICR測定を行った.しかし,骨格筋小胞体から放出されるカルシウムを検出するためには蛍光感受性試薬fura2が高濃度で大量に必要であった.そのうえ,従来の張力を利用した方法と同程度の時間もかかり,ランニングコストから考えてメリットは少なかった.骨格筋細胞のカルシウム動態については,ヒトの骨格筋培養細胞を用いて検討を行った.蛍光抗体法でリアノジン受容体と骨格筋細胞に認められるアクチンの発現を確認した.リアノジン受容体は筋芽細胞を低血清培地で培養後7〜9日で出現した.同時期の骨格筋培養細胞でカフェインによるカルシウム濃度の上昇とプロカインによるその抑制とアセチルコリン10-6Mによるカルシウム濃度の上昇を確認した. 今後さらに,この細胞のハロタンやダントロレンによる反応を検討後,実際に悪性高熱症疑いの患者から得られた骨格筋から筋芽細胞を培養してカルシウム動態の検討を行う予定である. 遺伝子検索につては,CICR速度の異常が認められた患者とその家族の白血球からDNAを取り出した.SSCP法で今までに報告された数カ所のone point mutationの検索中である.
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