研究課題/領域番号 |
08407055
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本田 孔士 京都大学, 医学研究科, 教授 (90026930)
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研究分担者 |
岡本 直之 京都大学, 医学研究科, 助手 (70263069)
谷原 秀信 京都大学, 医学研究科, 講師 (60217148)
柏井 聡 京都大学, 医学研究科, 講師 (50194717)
小椋 祐一郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (70191963)
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キーワード | 虚血網膜 / 遅発性細胞死 / グルタミン酸 / NMDA受容体 / カルシウム / 一酸化窒素 / フリーラジカル / ビタミン |
研究概要 |
我々の網膜虚血に関する研究から、2つの大きな流れに基づく薬理学的治療の可能性がわかってきた。1つは、興奮性アミノ酸のグルタミン酸の作用により細胞内に多量に流入するCa^<2+>によって引き起こされる遅発性細胞死の機構と、代謝障害に陥った組織に生じるラジカルおよび非ラジカル起炎性物質によって惹起される微小血管傷害機構である。虚血網膜では血管構造とは無関係に部位選択的に生じる遅発性細胞死は神経細胞固有の虚血に対する脆弱性に基づくもので神経細胞特有の機構に起因し、網膜血管閉塞後生じる血管性病変は、組織のアシドーシスおよびフリーラジカルの産生が関与した非特異的炎症反応の結果と考えられる。分子レベルで言うとCa^<2+>過剰負荷、アシドーシス過多、およびフリーラジカル過剰産生の3つの過程が関与している。我々の研究から、虚血によって網膜中に過剰に遊離されたグルタミン酸はNMDA受容体を介してCa^<2+>の細胞内流入を招き、その結果一酸化炭素合成酵素を持つアマクリン細胞から一酸化窒素(NO)を発生させ、生じたNOは細胞膜を透過し拡散し、少量のNOはNMDA受容体を抑制してCa^<2+>の細胞内流入を阻止し神経細胞保護的に働き、多量に生じたNOはスパーオキシドと反応し細胞死へ導く事がわかった。つまり、網膜虚血におけるNMDA受容体を介したCa^<2+>負荷が、NOを橋渡しとして活性酸素フリーラジカルと繋がり虚血における2つの機構が一連の出来事として収斂してきた。一方、内在性のドパミンが、神経系の情報伝達に関連するばかりでなく、網膜でグルタミン酸の興奮性毒性に拮抗する神経保護作用を持つという知見は、我々が初めて報告したが、細胞内分子機構の解明と並行して行ってきた細胞死の調節因子の研究から内在性物質の亜鉛、水溶性ビタミン群のうちB1,B6,B12,ニコチン酸にグルタミン酸毒性に対する保護作用があることがわかった。
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