軟骨に特典的に存在する膜蛋白(膜結合型トランスフェリン様蛋白、MTF=コンドロトランスフェリン)を精製してそのcDNAをクローニングした。さらにこの蛋白のゲノム遺伝子の構造を、promoter領域を含めて決定した。promoter領域にはsox9など軟骨特異的発現に関与する転写因子結合部位が存在した。現在、軟骨特異的発現に関与するエンハンサー領域を決定するために、この遺伝子上流2kbをルシフェラーゼと連結したキメラ遺伝子を作成して研究を進めている。またマウスのコンドロトランスフェリンcDNAをクローニングして、その構造を決定し、MTFの系統進化上における位置づけが、他のトランスフェリン遺伝子ファミリーとは明らかに異なることを明らかにした。さらにコンドロトランスフェリン遺伝子が他の軟骨特異的遺伝子であるアグリカンおよびII型コラーゲンと平行して軟骨分化の過程で発現することを証明した。興味深いことに、コンドロトランスフェリンのアンチセンスオリゴマーを軟骨細胞培養系に添加すると、軟骨分化が遅延した。しかも予備実験で、コンドロトランスフェリン遺伝子を過剰発現した細胞株では軟骨分化が亢進した。これらの知見から、コンドロトランスフェリンは軟骨細胞の分化に重要な役割を果たす新規シグナル物質であり、既知のトランスフェリンファミリーとは異なる役割を果たしていることが明らかとなった。 またこれまて作用が不明であったPTH-C端ペプチドが、MMP以外に、オステオポンチン、X型コラーゲン、PTHrp.PTH受容体mRNAレベルを上昇または減少させることを見いだした。その他、PTHとPTHrpの作用機構にRBP(レチノール結合蛋白)が関与していることを発見した。これらの知見は、内軟骨性骨形成におけるPTHとPTHrpおよび軟骨細胞膜蛋白の役割を理解するために役立つ。
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