研究課題/領域番号 |
08407069
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大森 郁朗 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70064342)
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研究分担者 |
高見澤 豊 鶴見大学, 歯学部, 助手 (10257347)
高橋 智秀 鶴見大学, 歯学部, 助手 (40247341)
伊平 弥生 鶴見大学, 歯学部, 助手 (40200018)
中島 由美子 鶴見大学, 歯学部, 助手 (30237284)
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キーワード | ヒト乳歯初期齲蝕罹患エナメル質 / 再石灰化現象 / フッ素徐放性コート材 / EPMA所見 / HREM所見 |
研究概要 |
小児歯科診療室で患者の乳臼歯隣接面にFコート材を塗布してから、その乳歯が脱落期を迎えるまで経過観察を続けて、臨床的に齲蝕抑制効果を判定した後に、脱落あるいは抜去した当該歯を研究資料としてEPMA観察や、HREM観察を行った。 EPMA観察に当たっては、別に脱落乳臼歯の隣接面を対象にして、in vitroでFコート材を塗布した後、3日,10日,および60日間、石灰化液に浸漬した試料について、健全歯面や初期齲蝕罹患歯面のフッ素取り込み状態を観察し、それらの結果をin situで得た所見と比較した。その結果、in situでFコート材を塗布した場合も、in vitroでFコート材を塗布した場合も、初期齲蝕罹患歯面の場合は、Fコート材直下および周辺のエナメル質へのフッ素の取り込みは著しく多く、その分布範囲も表層下齲蝕罹患領域にまで及んでいたのに対して、健全歯面と診断された歯面の場合は、いずれもフッ素の取り込み範囲は表層エナメル質に限局していた。一方、in situでFコート材を乳臼歯隣接面の初期齲蝕罹患歯面に塗布した試料について、Fコート材で被覆されているエナメル質の初期齲蝕病巣の超微構造を、HREMで観察した。Fコート材で被覆されている部分のアパタイト結晶の配列は規則的であり、健全エナメル質のそれと同様であった。それらの結晶は中心穿孔や側面に欠損のないアパタイトの結晶形態を示したが、健全エナメル質の結晶形態と比べると、丸みを帯びており、結晶の厚径もわずかに大きかった。HREM所見では積層欠陥が見られたが、これは結晶の融合によって生じたものかもしれない。これらの所見と本症例のEPMA所見から、in situで乳臼歯隣接面の初期齲蝕罹患歯面をFコート材で被覆すると、口腔内環境下で初期齲蝕病巣に結晶性の再石灰化が惹き起こされることが示唆された。
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