研究課題
本年度は研究の2年目にあたり、初年度に行った調査結果の分析ならびに文献的考察を基に「慢性病をもつ高齢者の性の充実を促す援助モデル試案」を考案し、実践での試験的試みによるモデル試案の検証・修正を行った。モデル試案の検討に際しては、Johnsonが規定した看護介入モデルの構成概念に依拠し、一貫性のある構造化されたモデルの開発をめざした。考案したモデル試案の構成要素は次の通りである。1)モデルの前提:性とは全ての人間がもつ潜在能力の一つで、全人的存在としての人間同士がきずなを築こうとする能力である。2)援助の目標:高齢者が慢性病をもつことによる性への影響に対して効果的に対処でき、性の充実を図ることができる。3)対象:慢性病をもつことで性への何らかの影響を受けている高齢者。4)看護婦の役割:慢性病をもつことで性への影響を受けている高齢者が、性の充実へのニードに応じて効果的で建設的な対処行動をとることにより、自らの性的エネルギーを最大限に発揮して自分にとって大切な人とのあたたかいきずなを築いていくことができるように支える。5)介入の焦点:【性反応の低下】【性行為の困難性】【性的魅力の減退】【責任や権限の移行】【夫婦の力関係のゆらぎ】【孤独・孤立】。6)介入の様式:〈高齢者の性への影響ならびに性的ニードに関する包括的アセスメント〉〈性機能の最適レベルの維持・促進〉〈豊かな性行動を促す援助〉〈性役割の柔軟な移行へのサポート〉〈夫婦間のあたたかなエネルギーの交換の支援〉〈自己尊重を促進するカウンセリング〉〈生・性の活力を沸き起こすセルフ・ケアの促進〉〈他者とのつながりを維持・拡大するための場や組織づくり〉〈老い・性の意味を考え深めることを目的とした医療者の自己研鑽〉。これらの介入様式に沿って、具体的な介入の手段ならびに介入のためのシステム(環境・設備、人的・物的資源など)の内容を検討した。さらに、考案したモデル試案の内容妥当性を検討するために、高齢者看護ならびに性に関する看護の領域の看護専門家を招聘して、モデル試案の検討会を組織し、数回に渡り、モデル試案の内容ならびに構造について検討を行った。そして、それらの検討事項を基にモデル試案を修正・精錬し臨床でのモデル試案の試験的な適用を実施・継続している。
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