研究概要 |
本研究は木造家屋における蟻害や腐朽の実態を明らかにし,家屋の維持管理や生活行為に伴う水分供給など生活科学的側面からその発生要因と防止策の検討を行い,木造住宅における長期の耐震・耐風性能の保持に寄与することを目的として,非破壊的手法により外部から既存木造家屋の蟻害や腐朽の発生率,耐力低下と蟻害・腐朽の定量的関係,生活上の水分制御や防水を主体とする維持管理手法の検討を行った。研究成果概要を以下に述べる。(1)居住者を対象とする木造の耐久性についてのアンケート調査を全国19都市を対象に実施した。阪神・淡路大震災の教訓は活かされず,住まい手の建物性能の維持管理に対する努力不足が明らかになった。(2)設計,施工者を対象として耐震・耐久性に関する設計,施工方法について全国の工務店を対象に実施した。強度や耐久性に関する考え方,施工実態に地域差があり,在来軸組工法と伝統工法の設計思想の違いが,接合部の補強など施工実態に反映されていないことが明らかになった。(3)既存建物における非破壊検査による蟻害・腐朽度の判定基準の検討を行った。超音波診断では,詳細な施工状況が既知でない場合には劣化の判定が困難であった。熱画像については,条件の制約はあるが外周部の判定が可能であることが分かった。(4)床下温湿度調査を長期間実施した。竣工直後のべ夕基礎では床下の相対湿度が95%以上となって,竣工時期や防蟻・防腐方法によっては劣化が促進されることが明らかになった。床下調湿剤による乾燥の維持は防蟻効果を有することが示唆された。(5)柱や土台の欠損より,筋違い端部の欠損が耐震壁の強度を低下させる傾向が強いことが明らかになった。また,腐朽材の場合は重量減少率に比例して釘の引抜き抵抗が低下するが,食害のみでは,年輪密度に比例して残存晩材率が高くなるため,強度低下は小さくなった。
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