土壌-植物-大気連続系における水循環過程に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08408003
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 田中 正 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (50015880)
• 研究分担者: 辻村 真貴 愛知教育大学, 総合科学課程, 助教授 (10273301) ; 中野 孝教 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (20155782) ; 嶋田 純 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (80206169)
• キーワード: 土壌-植物-大気連続系 / 水ポテンシャル / 水輸送 / 通水低抗 / 水フラックス / 樹幹水分量 / 蒸散量 / 単木水収支

研究概要

土壌-植物-大気システムにおける氷の流れを考えると、植物は土壌から水を吸収して葉の気孔を介してこれを大気中に水蒸気として放出していることになるが、このシステムにおける水輸送に植物自体が果たす役割については不明な点が多い。本研究では水文学の観点から土壌-植物-大気と一つの連続した糸として捉え、各糸に共通する「水ポテンシャル」の概念に基づいて野外での原位置調査を実施した。対象とした樹林はアカマツ林とミズナラ林である。得られたデータを解析して以下の結果を得た。
1)一般に土壌-植物系の水輸送はオームの法則にアナロジーされ、土壌-植物系の水フラックスの大きさは植物の葉と土壌の2点間における水性ポテンシャル差に比例し、この2点間における通水抵抗の大きさに反比例する。土壌水と葉の水性ポテンシャル差と樹液流速との関係から、両者の間にはヒステリシスが存在し、日周期で見た場合は抵抗は一定でないことが示された。
2)樹液流速の連続測定から夜間においても無視し得ない水フラックが存在していること、また樹幹の体積含水率の変化から夜間に樹幹の水分量が増加する傾向にあることなどから蒸散が停止している夜間に生じている樹液流は樹幹に貯蓄される水分の増加に寄与しているものと考えられる。
3)アカマツの試験木を対象とした一日当りの単木水収支計算の結果、樹幹に貯蓄されている水も蒸散に寄与しており、その割合は日蒸散量の5〜10%に達することが明らかにされた。

研究成果

• [文献書誌] 小林義和・田中正: "サイクロメータによる樹木根糸のポテンシャルの測定について" 日本水文科学会学術大会講演予稿集. No.11. 58-59 (1997)
• [文献書誌] 濱田洋平・小林義和・田中正: "カラマツおよびミズナラ林土壌における根糸分布" 筑波大学農林技術センター講習林報告. No.13. 103-118 (1997)
• [文献書誌] Tanaka,T. & Ono,T.: "Contribution of sril water and its flen psth to starmflou gcne-ration in a foreated sxadnotor csthment in centrsl Japan." Int.Asso Hydrol.Sei.,Prylicstion. (印刷中). (1998)
• [文献書誌] Ehou,Q., Shimada,J. & Sato,A.: "Relatiunship between sril maisture and sril eleotrical resistivity" 筑波大学地球環境変化特別プロジェクト研究報告集. No.5. 295-304 (1998)
• [文献書誌] Nakano,T. & Tanaka,T.: "Strsntirem iutopic constraints an the seasonal variation of the provenance of base cotions in rain water at Kawehami central Japan." Atmospheric Ervironment. 31巻. 4237-4245 (1997)
• [文献書誌] Tsujimura,M. & Tanaka,T.: "Evaluition of evaporation rate from sril uicfacl using stahle iratayic conyisition of sril water in a forested hcrluoter basin" Hyodological Processes. (印刷中). (1998)