土壌-植物-大気連続系における水循環過程に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08408003
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 田中 正 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (50015880)
• 研究分担者: 辻村 真貴 愛知教育大学, 総合科学過程, 助教授 (10273301) ; 中野 孝教 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (20155782) ; 嶋田 純 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (80206169)
• キーワード: 実蒸散量 / Granier法 / ヒートパルス法 / 土壌水 / ゼロフラックス面 / 比抵抗トモグラフィー法 / 安定同位体比 / ストロンチウム同位体

研究概要

森林からの実蒸散量を評価するために、Granier法による連続自動樹液流速測定を行い、日・月単位の蒸散量を定量的に評価することを試みた。測定対象木としてアカマツ林を選定し、ヒートパルス法との比較検討を行った結果、Granier法による樹液流速データから日・月単位の蒸散量を精度良く評価できることが明らかとなった。9月の観測結果では、蒸散量は2〜3mm/日を示し、蒸散量が吸水量を上回っていたが、以降11月までは吸水量が蒸散量を上回り、この期間において樹木内部に水分の貯留が行われていることが示唆された。
一方、林床からの地面蒸発量および蒸散量を、土壌水の安定同位体比およびゼロフラックス面の位置を基準とした土壌水分の変化量から推定した。その結果、ミズナラ林で覆われた中部山岳流域の地面蒸発量は総蒸発散量の約5%、年間総降水量の約2%を占めていた。また、アカマツ林で覆われた平地での夏季の平均日蒸発散量は4.2mmで、このうち蒸発量が1.3mm、蒸散量が2.9mmと見積もられ、日蒸散量の約70%が樹木からの蒸散によって占められていることが明らかにされた。
また、本年度の研究では、比抵抗トモグラフィー法の確立を行い、三次元空間での土壌水分の挙動を可視化することに成功した。この手法は、今後土壌-植物間の水循環の実態をより詳細に究明する点において威力を発揮するものと考えられる。さらに本年度は、酸性雨研究におけるストロンチウム同位体の利用について取りまとめを行ったほか、流域水循環に果たす森林の役割について、降水の再循環、樹幹流の重要性などの観点から取りまとめを行い、国内外で研究成果を発表した。

研究成果

• [文献書誌] 飯田真一・小林義和・田中正: "樹液流速の連続測定による実蒸発散量の評価" 日本水文科学会学術大会講演予稿集. No.12. 34-37 (1998)
• [文献書誌] Zhou,Q.Y.,Shimatt,J.& Sato,A.: "Three-dimensional sail resistivity inversion using patihing method" 応用比負. 39. 524-532 (1999)
• [文献書誌] 中野孝教・横尾頼子・田瑞鈴: "酸性雨研究におけるストロンチウム・鉛安定同位体" ぶんせき. No.10. 785-790 (1998)
• [文献書誌] Tsujimura,M.& Tanaka,T.: "Evaluation of evaporation rate from forected sail surface using stable isotopic composition of sail water in a headwater basin" Hydrological Processes. 12. 2093-2103 (1998)
• [文献書誌] Shimada,J.et al.: "Identitative evaluation of ferest floor evaporation and transpiration rerealed by seil water comtent ofservation in humid temperate pine forest" Int.Assoc.Hydrd.Soi.,Publication. (印刷中). (1999)
• [文献書誌] Tanaka,T.: "The role of forests in the hydrological cycle of a rasin" UNESCO IHP Report of the Project on the Hydrodogy of Fercstation of the Dry Lands. (印刷中). (1999)