研究課題/領域番号 |
08408018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 知 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10114547)
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研究分担者 |
小野 双葉 東京大学, 工学部, 助手 (00011198)
米岡 俊明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40013221)
大津 繁樹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (30272397)
寺井 隆幸 東京大学, 工学部, 助教授 (90175472)
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キーワード | FT-IR / 脱着機構 / 光励起脱離 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
1.ステンレス鋼やその構成成分の酸化物資料表面上に吸着したD_2Oの光励起脱離の研究 D_2Oと接触させた試料に紫外線及び可視光を照射して、光による脱離促進効果について質量分析器を用いて研究をした。数ケ月間にわたって重水蒸気の吸着・脱離を繰り返し行ったCr_2O_3粉末は、180℃で乾燥脱離が平衡状態に達した後に250nmの紫外光を照射すると再びD_2OとHDOの脱離量が増加をした。一方、初期のCr_2O_3粉末ではこのような現象は見られず、試料表面の変質が原因で挙動に差が生じたと考えている。NiO粉末、カーボン板では、数日間の実験では光照射による脱離促進効果は見られなかった。より微量の脱離量増加を測定できるように、今年度末、サンプルハウスのコンパクト化、光の利用効率を増加等の装置の改造に着手した。今年度中には調整・整備が終わり、実験に入れる予定である。 2.フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)による酸化物表面上に吸着したD_2Oの光照射脱離の研究 D_2Oを吸着させたCr_2O_3試料を乾燥させる際に、O-D伸縮振動の赤外線吸収スペクトルを観察しながら外部からの紫外光等を照射した時の脱離挙動を調べた。250nmの光を入射した場合、2200〜2700cm^<-1>に現れた幅広いピークのうち高波数側に振動を与えている成分の脱離速度が増加した。高波数側成分は通常の乾燥脱離の際には、中・低波数側成分よりも脱離速度が遅いことから結合エネルギーが大きいと考えている。光の照射は、結合エネルギーの大きい吸着D_2O分子の脱離を促進していると考えられる。また400nm,700nmでは高・中・低波数において脱離促進効果は見られなかった。 3.原子間力顕微鏡(AFM)による試料表面の観察 SS304の板をアルミナ粉末で研磨した後、電気炉で400℃、144時間加熱し、加熱前後の試料表面の状態をAFM及びXRDで観察した。加熱前の試料は目視では鏡面状態で銀色の光沢をしており、AFMでは研磨による傷が確認された。加熱後の試料は目視では黄金色の干渉被膜に被われ、AFMでは試料表面を四角形の析出物が密に被っている様子が観察された。またXRDでは加熱前後で出現ピークに変化は生じなかった。したがって400℃程度の温度でも、ステンレス鋼の表面は酸化されて変質していくが、この温度で100時間程度の加熱では表面析出物層の厚さは薄く、XRDでは違いが見られなかったと考えられる。現在、試料の温度を電子冷却素子を用いて、室温に対し_+15℃,_-10℃ぐらいの範囲で制御できるよう改良を検討している。これにより室温付近での試料表面上への大気中水分の吸着・脱離の様子を非接触法で観察したいと考えている。
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