研究課題/領域番号 |
08408018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 知 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10114547)
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研究分担者 |
小野 双葉 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (00011198)
米岡 俊明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40013221)
大津 繁樹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (30272397)
寺井 隆幸 東京大学, 工学部, 助教授 (90175472)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 水滴の吸脱着機構 / CRYSTAL95 / 光電子分光法 |
研究概要 |
1. 原子間力顕微鏡による水滴付着観察方法の確立 水滴を観察するために、試料部のみを効率的に加熱・冷却をでき、また試料と探針の間にバイアス電圧をかけられるように冷却ステージの製作した。このステージを用いてHOPG劈開面上を観察したところ、原子層1〜3層程度のステップなどが観察できた。さらに大気中で純水を接触させた後、除塵スプレーで乾燥させてから観察すると、露点以下にするとステップ上には密に、テラス面には疎に小さな粒が出現し、時間とともに成長していく過程が観察できた。この粒は露点以上にすると消失し、再び露点以下にすると出現し成長をしていくことから、水滴であることがわかった。 2. 原子間力顕微鏡による酸化鉄表面上での水滴の付着挙動の研究 ランダムな純鉄結晶面上に成長した酸化物は水が付着をすると、酸化物の形状が変化していく場合があることがわかった。幾つかのメカニズムが考えられるが、室温では拡散係数が極めて低いことなどから、酸化物表面に付着していた不純物が電解質物質として作用したために生じた電気化学的メカニズムによる物質移動が起きたためと考えている。このような物質移動は、スッパタリングにより表面に欠陥があるほど顕著に現れた。 また(100)面が主体の純鉄表面に成長した酸化物表面上では、表面に欠陥があると水滴の付着が容易に起きた。しかし形状変化は観察できなかった。これは下地の方位が揃っていることから、成長した酸化物はエピタキシャルになっているために、安定性が高いためと思われる。 水滴の付着と酸化物表面の原子レベルでの凹凸には密接な関係があることがわかった。 3. 量子化学計算による酸素空孔が水酸基に与える影響の評価 CRYSTAL95を用いて、酸化リチウム中に酸素空孔が水酸基に与える影響を評価を試みた。計算により酸素空孔の生成によって水酸基のOH結合の距離、平衡位置が変化することがわかった。また水酸基に対する酸素空孔の位置によって安定性が異なることもわかった。さらにOH方向のポテンシャル曲線から力の定数を求めて振動数を求めたところ、幾つかの仮定を含み厳密ではないが、定性的には酸素空孔による影響を受けた水酸基の伸縮振動が低波数側にシフ卜することを説明できたと考えている。 4. 光電子分光による金属酸化物表面上への水の吸脱着メカニニズム研究 XPSにより酸化鉄表面に水を吸脱着させた時の電子状態の変化を観察したところ、複数の酸素1sピークが観察されたのでその帰属を行った。また鉄2pスペクトルの観察により、スパッタリングによって鉄が還元されることが判った。さらにスパッタリングして酸化物表面に欠陥が増すと水の付着が起こりやすくなることが判った。
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