研究概要 |
温度勾配型ビニールハウス(幅3mで,長さ30m)を造り,開発した精密な制御プログラムを組み込んで性能試験をしたところ,出口と入口との温度差を昼夜,季節を問わず常に5℃に保つことに成功した.このハウスで春から冬までの1生育期間,シラカシ稚樹を育てたところ、夏の高温期にシラカシ稚樹の生育が高温区ほど極端に抑制されて,温暖化がシラカシ稚樹の成長に大きな負の影響を及ぼすことを明らかにした. 1996年の植物生育期間(4〜11月)に,筑波大学水理実験センターの草原において群落上のCO_2フラックスの連続観測を行った.また,CO_2フラックス観測データと水理実験センターのルーチン気象観測データを用いて,草原と大気との間のCO_2とH_2Oの交換過程の季節変化を解析した.その結果,草原の水利用効率は葉面積指数の季節変化と類似した変化を示し,草原の地表面湿潤度(草原のH_2O輸送効率)は月降水量の変動とよく対応した変化を示した. ガス交換法によるCO_2交換速度の測定と炭素同位体比やクロロフィル蛍光の測定とを同時に行うことによって,葉緑体内のCO_2濃度を推定するシステムを構築した.現在,ガス交換測定装置に接続した,同位体分析用のサンプル調整ラインの試運転を行っている. チトクロム経路とシアン耐性経路の端末酸化酵素の酵素同位体分別が異なることを利用してこれらの分別定量を行うシステムを構築した. 森林土壌O層の呼吸速度に及ぼす大気CO_2濃度及び温度の影響について,実験を行った.調査試料は,利尻島鬼脇のトドマツ・エゾマツ林O層(モル型),白神山地ブナ林O層(モル様モダ-型),屋久島安房のスダジイ林O層(モダ-型),石垣島イタジイ林O層(ムル型)である.O層試料を大型チャンバー内で,通気法により,呼吸速度を測定した.その結果,呼吸速度は大気CO_2濃度よりも温度により多く影響を受けることが明らかとなった.
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