この2年間の研究では研究では、ウシ心筋のチトクロムc酸化酵素の完全酸化型の2.3Å分解能、還元型の2.36Å分解能、酵素結合型モデルであるCO化型の2.8Å分解能、アジド化型の2.9Å分解能の結晶構造解析に成功し、以下のことが明らかになった。 酸素型酵素の2.3Å分解能の結晶構造解析では、(1)酸素還元活性中心への配位子はパーオキシドである。(2)CuBの配位子であるHis240はTyr244と共有結合している。(3)分子内部に電子伝達、プロトン輸送に関与する水がある。(4)Ca或いはNaと思われる。金属イオンが分子内部に存在する。(5)2量体で存在し、リン脂質であるカリジオリピンは2量体を安定化している。(6)膜貫通領域のαヘリックスにはグリシン残基が7%含まれており、膜貫通領域ではグリシン残基はαヘリックスを壊すアミノ酸として働いていない。 還元型酵素の2.35Å分解能の結晶構造解析では、(1)酸素還元活性中心のFea3とCuBの間には配位子は存在しない。(2)サブユニットIのGly49からAsn55付近の構造が酸化型と大きく異なっている。 CO化還元型酵素の2.8Å分解能の結晶構造解析では、(1)COは酸素還元中心に配位している。(2)サブユニットIのGly49からAsn55付近の構造は還元型と同じである。 アジド化酸化型酵素の2.9Å分解能の結晶構造解析では、(1)アジドは酸素還元中心と蛋白質表面に結合している。(2)細菌の酵素で示されたCuBに配位したHisの構造の揺らぎは見られなかった。
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