研究概要 |
水晶体分化においては、網膜原基による誘導作用によって、Sox2,Sox3の発現が外胚葉で開始され、水晶体プラコードの形成とδ-クリスタリン遺伝子の発現がそれに続く。SOXの作用の分子機構を中心に研究をすすめた。 1. SOXの作用特異性。水晶体ではグループBSox遺伝子であるSoxl-3が発現されるが、他のSOX蛋白質がδ-クリスタリン・エンハンサーを活性化できるかどうかを調べたところ、他のSOXでは全く活性化されなかった。活性化能を持つSOXlと活性化できないSOX9の間でキメラSOX蛋白質を作り、特異性の機構を解析した。キメラSOX蛋白質がδ-クリスタリンDC5エンハンサーの転写を活性するためには、HMGドメインのC末端側のドメインがSOXlのものである必要がある。このドメインは、SOXに隣接した部位に結合するパートナー因子δEF3との相互作用のドメインであり、SOX2、SOX3でも保存されている。 2. 新たなグループB Sox遺伝子。Soxl-3以外のグループBのSox遺伝子をスクリーニングした。その結果、Sox14とSox21を見い出した。SOX14,SOX21はSOXl-3とδEF3相互作用ドメインが良く似ており、これらの間の機能的相互作用が期待される。 3. δ-クリスタリン・エンハンサーの活性の制御。δ-クリスタリン・エンハンサー全長の中での主要なSOX,PAX6,MAF結合部位を同定し、その結合塩基配列に塩基置換を導入して、初代トランスジェニックマウス中での発現によって各々の転写制御因子の作用を分析し、次の結論を得た。SOXはδ-クリスタリンの発現に必須である。PAX6は水晶体上皮でのクリスタリン発現を抑制しているLargeMAFは、水晶体繊維部分で遺伝子の活性を高めている。
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