研究概要 |
本研究は血管内皮細胞が有するshear stress感受性遺伝子を探索し、その中から新規な生理活性物質を発見することを目的とした。 初年度はshear stressに感受性のある内皮遺伝子の総数を評価するため、mRNAのdifferential displayを実施した。その結果、培養ヒト臍帯静脈内皮細胞に15dynes/cm^2のshear stressを6時間作用させると、differential displayで検出できたmRNA総数1507の中、発現が2倍以上に増加したものが33、逆に発現が半分以下に減少したものが27認められた。両方で約4%の遺伝子がshear stress感受性であった。 2年度にはこの遺伝子群から任意の16個をクローニングし、その塩基配列を決定した。ホモロジー検索を行った結果、16個の内6個は既知の遺伝子、すなわちlaminin B1 chain, H^+-ATP synthase coupling factor 6,lysyl oxidase,myosin light chain kinase,NADH dehydrogenase,Interleukin-8 recepterで、残りの10個はホモロジーのある遺伝子が見当らなかった。この10個の中には、未知の遺伝子も含まれていると考えられた。 最終年度はshear stress(15 dynes/cm^2,8時間)を作用させたヒト臍帯静脈内皮細胞のcDNAライブラリーを作成し、そこからG蛋白共役型受容体ファミリーに共通する塩基配列を利用してshear stressに反応する新規な受容体のクローニングを試みた。その結果、未知のクローン(Flow-induced Endothelial G protein-coupled receptor gene-1;FEG-1)を得た。この遺伝子は375アミノ酸からなり、アシジオテンシン受容体とケモカイン受容体と類似していた。
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