研究課題/領域番号 |
08451003
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤本 隆志 千葉大学, 文学部, 教授 (20001795)
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研究分担者 |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 助教授 (70301091)
横手 裕 千葉大学, 文学部, 助教授 (10240201)
忽那 敬三 千葉大学, 文学部, 助教授 (70192028)
高橋 久一郎 千葉大学, 文学部, 教授 (60197134)
飯田 亘之 千葉大学, 文学部, 教授 (90009663)
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キーワード | 分別 / 境界 / タブー(禁忌) / 差別 / 辺境 / 地球化 / アブステンション(差し控え) / 紛争 |
研究概要 |
類種言語の学習に準拠する人間の分別能力が言語をもつ動物としての人間の本性になる事実を確認し、この本性がしばしば分断された異質の物事の一方に対する差別やその排除を志向する歴史的機制を摘出することができた。たとえばアリストテレスがピタゴラス派の対立概念表(systoichia)と呼んだ「光と闇」「直と曲」「善と悪」「右と左」「男と女」など10対の反対概念などは、古くはゾロアスターの伝統に由来していて、ギリシア思想やユダヤ思想にも重大な影響を及ぼしているだけでなく、それら対立者の峻別が近世以降西欧化された現代にいたるまで対立と紛争の根になっている。物事の分別は所与の二分から始まるゆえ、分割による対立や紛争は数学のような理論から政治のような実践にいたるまで、人間の記号行為すべてにわたって宿命的に発生しうる。その止揚形式たる弁証法的三分法によっても事態は解消されない。 本研究の研究分担者たちは、歴史的に重要と思われる各種区分とその境界に生ずる諸問題を鋭意検討したうえで、それらの解決策を模索した。たとえば色彩論や交通論の観点から「緑」と「赤」の境界、人間論の観点から「感性」と「知性」の境界、科学論の観点から「科学」と「非科学」の境界、宗教論の観点から「正統」と「異端」の境界、政治学の観点から「国民国家」の地理的・民族的境界、認識論の観点から「事実」と「価値」の境界など、学問上基本的な境界に纏わる諸問題が検討され、それら境界線上に生ずるヴァーチュアルな紛争と創造の根源が見定められた。とくに紛争問題の解決ないし解消には、ボーダーレス(あるいはペリフェラル)な視点から、歴史的タブーに抵触することによって生ずる自己の損失をも受苦するような寛容な徳性、自己利益の追求をも適宜差し控えるような倫理的態度が必要になることが理解された.
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