本年度は主に道教内丹関係の主要著作をコンピューターに打ち込む作業を行なった。まず、もっとも基本的な資料である後漢の魏伯陽『周易参同契』を打ち込み、次いで北宋の趙伯端(趙紫陽)『悟真篇』を打ち込んだ。さらに全真教の基本経典にもなっている唐末から五代にかけての『鐘呂伝道集』『霊宝畢法』『入薬鏡』を打ち込んだ。そのため、コンピューターそのほか若干の設備を整え、打ち込み作業は研究室補助員のアルバイトを使って行なった。打ち込んだ資料については、まず『周易参同契』の読解を行なった。それまでのさまざまな注を集めた清朝・仇兆鼇の『古本周易参同契集注』に基づいて、一通り解約した。ただし、資料がすこぶる難解なため、本年度としては重要な語彙を抽出してしっかりした概念規定を行なう段階にまでは至っていない。ついで『鐘呂伝道集』を検討し、かなりの部分の日本語訳を蓄積した。この作業では、相関連する『霊宝畢法』『入薬鏡』の解釈も平行して行なった。また中国でのこの方面の研究状況を把握するため、九七年正月に北京に出張し清華大学などで情報交換を行なった。さらに全真教関係に資料である『大丹直指』や『雲光集』などを打ち込み内丹語彙の展開状況を検討する基礎資料の準備に取りかかった。 本年度の研究作業はほぼ以上の通りであり、基礎研究があまり為されていないこの分野の研究としては、ほとんどの時間を基礎資料の整備に費やさざるを得なかった。今後の作業としては、さらに膨大な存する基本資料の打ち込みと、それを整理して語彙を抽出し、その展開を位置づけること、『遵生八箋』『性命圭旨』『大丹直指』そのほかに付けられている多くの図の収集とその整理がある。
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