本年度も引き続いて道教内丹関係の主要著作をコンピューターに打ち込む作業を行なった。唐末北宋以來の内丹学の展開は金代にいたって大きく様変わりしたが、本年度はその新しい宗教である全真教の基本典籍を数点コンピューターに打ち込んだ。丘長春の『大丹直指』と王玉陽『雲光集』はすでに打ち込んであるので、譚長真『水雲集』のほか、劉長生『仙楽集』『黄帝陰符経註』『黄庭内景経註』『無為清静長生真人至真語録』『長生劉真人語録』、丘長春『長春丘真人寄西州道友書』などを打ち込んだ。それと同時に、これら多くの典籍に見られる内丹語彙の展開状況について若干の検討を行なった。譚長真、劉長生、丘長春、王玉陽は他の二名とあわせて全真教開祖王重陽の弟子であり、一番弟子の馬丹陽を含め、七真と呼ばれ、後世の中国文化に大きな影響を与えた。ところが例えば「中国」という言葉は重陽や丹陽は使わず、長生が多用し、長春がやや使う。内丹学の特殊用語については、それほどのはっきりした特徴はないが、使用語彙の分布にはやはり若干の偏向がある。それらについては、まだ散発的に検討している段階で、整理はしていないが、いずれ整理して気功などとの関係もあきらかにしたい。また、『秘書集成』中の諸資料について、系統、特色そのほかの要項を抽出してカード化する試みも若干行なった。さらに、中国でのこの方面の研究状況を把握するため、九七年十月に北京に出張し、北京外国語大学などで情報交換を行なった。本年度の研究作業はぼ以上の通りである。今後の作業としては、図の収集とその整理がある。
|