本研究の目的は、まず後漢の魏伯陽『周易参同契』、北宋の張伯端『悟真篇』、唐末五代の『霊宝畢法』『鍾呂伝道集』『入薬鏡』などの内丹学の資料をコンピューターに打ち込み、内丹学の教説の発展を構造的に把握する点にある。これらの資料の打ち込みはすべて完了し、語彙解釈の基準としては清朝・仇兆鼇の『古本周易参同契集 注』を基本として『周易参同契』を解釈した。ついで『鍾呂伝道集』を検討し、かなりの部分の日本語訳を蓄積した。この作業では、相関連する『霊宝畢法』『入薬鏡』の解釈も並行して行なった。ついで唐末北宋以來の内丹学は金代にいたって大きく様変わりしたが、その新しい宗教である全真教の基本書籍を数点コンピューターに打ち込んで解釈することが目的である。そこで譚長真『水雲集』、劉長生『仙楽集』『黄帝陰符経註』『黄庭内景経註』『無為清静長生真人至真語録』『長生劉真人語録』、丘長春『〓渓集』『大丹直指』『長春丘真人寄西州道友書』、王玉陽『雲光集』、〓廣寧『太古集』など、いわゆる「七真」と呼ばれる、全真教開祖王重陽の弟子たちの著作を打ち込み、それらに見られる内丹語彙の展開状況について検討した。次ぎに『遵生八箋』『性命圭旨』『大丹直 指』などの図を収集分析し、内丹の修行との関連を把握することを目標としたが、残念ながら時間的な余裕があまり無く、十分な検討ができなかった。ただし『大丹直指』と『太古集』中の図については、その解説文を併せて分析した。その他『秘書集成』中の若干の資料について、系統、特色そのほかの要項を抽出してカード化した。これらの成果は、一部はすでに発表し、その他のものもいずれさまざまな形で発表する予定である。
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