研究課題/領域番号 |
08451006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉本 卓洲 金沢大学, 文学部, 教授 (80089218)
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研究分担者 |
西川 麦子 金沢大学, 文学部, 助手 (20251910)
島 岩 金沢大学, 文学部, 助教授 (40115580)
鹿野 勝彦 金沢大学, 文学部, 教授 (00169591)
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キーワード | 聖 / 賤 / 仏塔崇拝 / 菩薩信仰 / 聖者 / バクティ / フォキ-ル / カースト |
研究概要 |
本年度は、「南アジアの宗教文化における聖と賤との関わり」の中でも特に、印度学仏教学の側からの「聖の中に現れた賤」の問題を中心に研究を進めた。すなわち、杉本による「仏塔崇拝と菩薩崇拝に見られる聖と賤との関わり」と島による「ヒンドゥーの聖者信仰に見られる聖と賤との関わり」の問題を、仏教的価値体系やヒンドゥー的価値体系の最高位に位置する涅槃や解脱といった「聖」の側からとらえていこうと試みたのである。 その成果がまず杉本の「聖火壇と仏塔」と「有部教団と仏塔および仏像崇拝」で、前者ではヴェーダ祭式に用いられる聖火壇(ブラフマニズム)と仏塔(仏教)には共通性があり、聖と賤との関わりの問題には仏教とヒンドゥー教が共有する南アジアの宗教文化的基盤が存在することを明らかにされた。そして後者では、大乗的なものとされてきた民衆の(下あるいは賤からの)仏塔崇拝が、仏教的価値体系の最高位に位置する涅槃・解脱を重視した宗教的エリート集団である有部の中にさえ浸透していることが明らかにされた 一方、島は「ヴィトーバー神への巡礼と儀礼」では、ヴィトーバー信仰には寺院のバラモン(上)と信仰を現実に支え広めた低カーストの聖者という二重構造があることを明らかにし、さらに「ジュニャ-ネ-シュワルのギーター解釈」では、その中心的聖者の思想の中に、バクティ思想とともにナ-タ派のタントリズムの思想が混在していることを指摘し、バクティによる救済という聖なる価値の中に、当時すでに非正統的な呪術的タントリズム(賤)が入り込んでいたことを明らかにした。 今後、来年度以降は、このような「聖の中に現れた賤」という観点から見た聖と賤との重層的あり方を、文化人類学側からの「賤の中に現れた聖」という観点と突き合わせることで、その宗教的・社会的・歴史的意味をさらに明らかにしていきたいと考えている。
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