研究課題/領域番号 |
08451009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅野 覚明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70186170)
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研究分担者 |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 助教授 (70212066)
黒住 真 東京大学, 教養学部, 助教授 (00153411)
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キーワード | 日本倫理思想史 / 文武 / 武士 / 武士道 / 恋 / 歌 |
研究概要 |
本研究は、日本人の倫理思想を形づくる基礎範疇の内、特に「武」をめぐる諸観念を取り上げ、対極としての「文」の観念との比較・対照を通じて、従来、ややもすれば、破壊・強圧などの否定的イメージからのみ捉えられてきた「武」の観念の正当な位置づけを解明することを目的とするものであった。 以上の研究目的に沿い、研究2年度に当たる本年度は、初年度に引き続き、(1)古代から近代に渡って、武をめぐる諸観念に関わる資料を幅広く集め、(2)その資料を基に、各分担者が担当する個別研究対象領域に即して分類・整理・解釈を試み、(3)定例及び合宿の研究会において、報告・討議を繰り返した。また、(4)初年度に重点領域として取り上げた近世の「武士の思想」における「武」の観念の分析を更に深化させ、死生観・美意識・秩序といった倫理学的基礎範疇との連関のみでなく、人間の尊厳・限界状況・言語・恋といった、より突っ込んだ概念との連関の検討を試みた。 その結果得られた知見及び成果として、従来の研究が、特に近世の「武士の思想」を中心とした特定の個人や時代における思想の解明に止まるものであったのに対し、より広く「武」の観念という視点を取ることで、通時的な解釈が試みられつつある。 また、古代から中世にかけての説話・中世の芸能作品・近世の諸文芸といった、より広範な文化史全体を視野を広げたことで、民衆・僧侶・芸能者・戯作者・町民といった様々な階層において、「武」の観念がどのように受け止められていたのかが明らかにされつつあり、「武」の観念をめぐって、従来の研究方法とは異なる、より多角的・重層的・有機的な研究の可能性が得られつつある。このことは、昨年度以来継続されている、現地資料調査を基にした『葉隠』と和歌や諸芸道との関連の研究においても、一定の成果として、確かめられつつある。
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