1.本研究は、江戸時代に各地で制作された寺社縁起絵巻の美術史的、歴史的、宗教的、文学的意義を総合的に検討しようとしたものである。 2.平成8年度・9年度の両年度にわたり、国内諸地域に散在する江戸時代寺社縁起絵巻、および絵巻以外の画面形成(掛幅や絵馬額など)の同縁起絵の調査を、東京を中心とする関東、福岡を中心とする北九州、京都・滋賀・奈良の関西、愛知・三重の中京といった地域において実施した。併せて、それら諸地域の美術館・博物館学芸員、図書館の司書、教育委員会の調査員らと情報や知見を交換した。 3.主たる研究対象の寺社縁起絵巻を、都内に所在する下記の核心的な作品に絞り込み、精査した。・太田姫稲荷神社縁起絵巻 1巻 東京都千代田区 太田姫稲荷神社蔵 ・梅若権現縁起絵巻 3巻 東京都墨田区 木母寺蔵 ・若-王子縁起絵巻 3巻 東京都北区 紙の博物館蔵 ・平塚明神並別当城官寺縁起絵巻 3巻 東京都北区 平塚神社蔵 ・匪寺縁起絵巻 1巻 東京都台東区 匪寺蔵 4.本研究の主たる研究対象である江戸時代寺社縁起絵巻のほか、関連の先行寺社縁起絵巻に慣用される図像を、デジタルカメラとパーソナルコンピューターにより収集し、それらの整理、分類、分析を試行した。 5.上記の収集・蓄積した諸資料を総合的な考察の対象とし、江戸時代寺社縁起絵巻に特有の歴史的性格を明らかにすべく努めつつある。その成果の本格的公表を出来る限り近い将来に期したい。
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