今年度は、大脳病変による行為障害の中で、特にパントマイム失行、着衣失行、模倣行為の臨床病態について分析し、それらの機序を検討することから行為に関する脳内機構について考察した。なかでも物品の実際の使用や模倣行為が良好であるにもかかわらず自動詞的行為と物品使用行為のいずれにおいてもパントマイムの表出が悪いパントマイム失行は、これまでに記述されていない新しい失行症のタイプで、これが緩除進行性の変性疾患で明らかにされたことから、脳血管障害例でも詳細に検討すれば出現するかどうかが今後の課題とされた。 また、物品の視覚提示によるパントマイム表出の検査で提示された物品に上肢が接近する接近現象と同時に模写課題において手本をなぞり描きしたり手本に接近して描くclosing-in現象とが緩除進行性変性疾患例で認められたが、これは正しい行為表出に必要な想起困難である場合の、代償的方略であると考えられた。
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