さまざまな高次行為障害の臨床像を厳密な心理学的実験によって正確にとらえ、さらにMRIによる精密な病巣解析との関連から、以下のことが明らかにされた。 1)後方連合野病変による行為障害 後方連合野は、視覚、体性感覚、聴覚など、各種感覚が交流し、さらにそれらが統合されることによって複雑な機能を成立させる部位とされているが、これをさらに細分すると、1)上方後部連合野損傷では、純粋失書、運動覚性失読が生じ、ここには文字運動覚心像が存在する可能性が考えられる。2)下方後部連合野損傷では、観念運動性失行と観念性失行とが合併して起こることが多いが、それぞれが単独で生じることもある。3)内側部後方連合野損傷では、両側楔前部の病変で体軸の感覚障害が、右側の楔前部から帯状回後部の病変では道順障害が起こる。 2)前頭前野病変による行為障害 前頭前野の損傷では、模倣行為、使用行為、道具の強迫的使用、他人の手徴候、書字過多、把握現象などが生じるが、これらはいずれも行為者の意志や意図の問題と関係している。前頭前野は大脳基底核や大脳辺縁系と線維結合をもつことから、損傷によって意志や意図の異常が生じることは十分考えられ、そうした面と行為障害の検討から、前頭前野を中心とした行為遂行のモデルが考案された。(研究成果報告書参照)。
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