北海道大学教育学部附属乳幼児発達臨床センターの実験保育室に在籍している未就学幼児の生活と共同遊びの過程、彼らの仲間関係と仲間集団の形成過程を昨年に引き続いて2年目の継続観察を行った。この実験保育室では、二つの異年齢段階の幼児(年長児と年少児)が一緒に保育を受けるという異年齢混合保育の形態を取っていることと、子どもたちの自主的な活動を重視した自由遊びを中心にた保育を行っている。このような保育環境の中では、子ども達自身の自発的な集団活動や対人関係の構築といったものが優勢になっていると考えられ、保育環境の特異性に視点を当てながら彼らの集団形成やそこで展開されている社会的相互作用の過程を明らかにしていくことが必要である。 平成9年度には、昨年度収集されたビデオ資料と今年度新たに観察・記録されたビデオ資料を用いて共同遊びにおける社会的相互作用と仲間集団の形成過程について分析された。これらの分析から明らかになったことは以下の諸点である。 1、平成8年度に年長児であった男児集団の中で4人の排他的な遊び集団が存在し、彼らは遊び道具や遊びのための空間の専有という方法を使って勢力を誇示するという方略を取っていた。この集団の中でフォロワ-の役割を演じている1名の男児について何故この子が集団から離れることができなかったか1年間の資料の分析を行ったが、同じ年長児男児の中ではこれ以外にまとまった他の集団が存在していなかったこともあって離脱して他の遊び集団を作っていくことはできないこと、年少児と集団を作っていくことは年齢という属性に基づいたアイデンテイテイとも抵触するために不可能であったことなどが推測された。 2、平成8年度に年少児であった新参者の集団は、はじめはまとまった集団にはならず、一部が年長児集団に加わることなどを経過しながら、次第に同じ年齢同士の遊び集団を形成していった。ここににも年齢に帰属させたグループ・アイデンテイテイへの意識と形成が介在していた。
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