北海道大学教育学部附属乳幼児発達臨床センターの実験保育室に在籍している未就学幼児の園における生活と共同遊びの活動の様子、彼らの仲間関係・仲間集団の形成の過程を3年間にわたって継続観察を行った。この実験保育室では、二つの年齢段階の幼児(年長児・年少児)が一緒のクラスに編成されている異年齢混合保育の形態をとっていることと、子ども達の自主的な活動を重視した自由遊びを中心にした保育を行っている。このような保育環境の中では、子ども達の共同遊びを中心にした集団活動は彼らが自主的に展開する集団形成や人間関係の作り方に大きく依存してくることになる。このような保育環境の特殊性を積極的に研究の変数として取り込みながら、彼らの集団活動の展開の様子を小さな時間単位の中での具体的な活動の現れである対人的な相互作用の過程と、より大きな時間幅の中での観察を通して得ることができる彼らの対人関係の構造という二つの次元から明らかにしていくことを試みた。3年間に収集されたビデオ資料と今年度新たに観察・記録されたビデオ資料を用いて、彼らの対人的な相互作用の様子と対人関係の形成とその構造を分析し、仲間集団がどのように作られ、また変容していったのかその過程を明らかにした。これらの分析から明らかになったことは以下の諸点である。 1、平成8、9、10年度にそれぞれ年長児であった男児集団は、各年度で異なる三者三様の集団形成の仕方をしていた。異年齢混合の集団の中では年長児の集団のあり様が全体の集団構成に大きく影響を与えるが、決まった集団構成の形成過程の規則性や遊び文化の継承といったことも見出せなかった。8年度の年長児だけの排他的な集団、9年度の二つの年齢グループが混在した集団、10年度の大きな年長児を中心にした集団と年長と年少の混在した小集団の併存といったものがみられた。 2、これらの集団構成の仕方には、構成メンバーの子どもたちの特徴、そして各年齢集団の人数の大小が関係していることが推測された。
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