本年は訴訟経験者に対する質問紙調査を継続し、また、新たに企業の従業員に対する調査を行った。前者では裁判過程(発言、結果コントロール、裁判官や弁護士の情報能力、裁判官や弁護士の態度)や結果に対する評価(結果の有利さと満足感、結果の公正さ、手続きの公正さ、裁判官・弁護士への満足度、裁判制度への満足度と公正さ、裁判再利用の意志)などを評定させた。山形及び仙台の23名の弁護士を通して訴訟経験者に質問紙を配布し、最終的に94名から回答を得た。その結果、個々の事件の結果の評価では結果の公正さを重視し、制度評価では手続きの公正さが重要であった。後者の企業従業員に対する調査は2度目であるが、1回目は組織に対する公正感が組織の意思決定システムに対する知覚(構造的要因)と意思決定に関わる管理者に対する知覚(対人的要因)によって規定されることを示したが、公正感は組織に対する態度(誇り、同一化、忠誠心)とは余り強い関係は見られなかった。本研究では新たな対象者を使い、組織内の人間関係の質が従業員の組織に対する態度に与える影響を検討した。我々は日本の組織においては公正感と人間関係が両輪となって組織と成員を結び付けると仮定し、300名の企業従業員に質問紙を配布し187名から回答を得た。我々は仮説はおおむね支持されたが、公正の絆が確認されたことは、激動期にある日本社会の今後の方向性を指し示すものである。これまでの政策評価と国に対する態度の調査結果と併せて資料の検討を行い、その結果を研究成果報告書にまとめた。
|