不安障害のある者の症状のパターンと、認知行動療法の各技法の最適な組み合わせについて明らかにすることが、本研究の目的であった。まず、大学生における対人不安傾向の実験心理学的測定のための装置(皮膚温、皮膚電気活動、心拍率および最低-最高血圧)を新潟大学人文学部実験室内に設置し、データ測定ユニットを介してオンラインでパーソナルコンピュータに出力、ファイルとして磁気記録するシステムを完成させた。 次に、対人不安の行動評定法、および対人場面における認知的歪みと非合理性変数の評価法の開発を行った。前者に関しては、画像記録装置を購入して、これに記録された場面から数値化するシステムをつくった。後者に関しては、オリジナルな尺度(DITS)を作成し、妥当性を検討した。 実験では、新潟大学の学生から対人不安傾向を持つ者を対人不安傾向尺度によってスクリーニングした上で研究への協力を依頼し、すでに作成した尺度(DITS)の得点に基づいて、上記被験者を歪曲・非合理性優位群と非優位群に分けた。初対面の面接者の面接を受けるという対人的ストレス課題におけ、生理的変化、主観的不安感、行動面の混乱の指標が測定された。これをプリテストとし、3週間の自律訓練法訓練期間のあと、再度ポストテストとし、プリテストと同じ構成の対人ストレス課題において、各種データが測定された。さらに、実験群(2)×プレ/ポストテストの、2要因の分散分析などによって、検定された。 上記実験の結果、一部の生理指標において、非優位群において自律訓練の練習効果がより大きいことが確認された。つまり、認知的な歪みや合理的でない認知が高い対人不安傾向者においては、自律訓練法の効果が上がりにくく、認知修正の介入が平行して行われる必要があると考察された。
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