研究概要 |
本研究の目的は,対人不安傾向者の症状のパターンと,認知行動療法技法の最適な組み合わせを探ることであった. 前年度において,対人発話場面における認知的歪みと非合理性変数の評価法のツールとして作成された「発話不安に関連する認知と歪みと非合理的信念尺度」(DITS-SA:Distorted or Orrational Thinking Scale for Speech Anxiety)を用いて,下記の実験を行った. 大学生303名から,対人不安傾向を持つ者を対人不安傾向尺度(SADS,FNE)によって男子学生18名がスクリーニングされ,実験への協力が依頼された.異性面接者による面接を受けるという対人的ストレス課題におけ,生理的変化,主観的不安感,外顕行動面の混乱が測定された.また,18名は,DITS-SAの得点に基づいて,上記被験者は,認知の歪みと非合理性の優位群(H-DITS群)と非優位群(L-DITS群)に分けられた.これおプリテストとし,3週間のリラクセーション訓練期間のあと,再度ポストテストとし,プリテストと同じ構成の対人ストレス課題において,各指標が測定された.さらに,実験群(2)×プレ・ポストテスト×測定回数の,3要因の分散分析などによって効果が検討された. 上記実験の結果,一部の整理指標において,H-DITS群はL-DITS群よりもリラクセエーションと脱感作訓練の練習効果が小さいことが確認された.つまり,認知的な歪みや合理的でない認知が高い対人不安傾向者においては,リラクセーションのみならず,認知修正の介入が必要であることが示唆された.
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