本年度は、文献研究を実施して調査項目の作成を行うとともに、1996年10月20日に実施された衆議院選の翌日より全国調査(世論調査)を実施し、データの収集に努めた。調査方法は層化2段無作為抽出・訪問面接法。地点数は126、有効票数は1205、回収率は66.9%であった。また、選挙期間中にテレビと新聞の政治報道を資料として収集するとともに、こうした報道の内容を分析するためのフォーマットを作成した。現在、こうしたデータの分析を進めているが、現段階でも既に以下のような成果があがっている。 まず、政治報道に関する新聞とテレビの比較については、「政治や選挙について興味が湧くように伝えていた」「自分が知りたいことを突っこんで報道してくれていた」等の質問を行った。回答にあたってはテレビと新聞の優劣についての判断を求めたが、その結果、両質問とも「テレビの方」が35%前後、「新聞の方」が5%前後、「同じくらい良い」が2割弱、「同じくらい不十分」が2割、「報道を見ない・わからない」が2割で、全体として新聞に対するテレビの優位と、メディアに批判的な層の存在が確認された。 また、政治的洗練度を測定するために設定した政治的知識に関する面接調査の結果は他に類を見ない貴重なデータである。具体的には、小選挙区比例代表並立制、不在者投票、国民投票、直間比率、日米地位協定といった名称を答えさせる質問と、選挙の公約内容から新進党の名称を答えさせる質問を行い、結果を、完全回答、中間的回答(多少の誤りを含む)、無回答・不正解の3段階にコーディングした。 現在、政治的洗練度の尺度化のためのテストを繰り返しているが、この作業が終わり次第、尺度と上記のメディア関連の項目とのクロス分析を行う予定である。こうした作業は、世論を政治的認知能力ごとに層化して把握することに大きく寄与するものと思われる。
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