本研究は、交通行動の国際比較研究を実施するものである。研究分野としては、1)ドライバーのハザード知覚とリスク知覚、2)ドライバーのコミュニケーション行動、3)車間距離の走行実験を実施した。方法論を確立するために、まず日本での実験的研究を中心に行った。 ドライバーのリスク知覚の実験室実験では、ハザード知覚とリスク知覚、安全運転への自信度、速度調節によるリスク回避行動の関連性について、ビデオ映像を用いた実験室実験により調べた。ハザード知覚の技能(理解力)はリスク知覚と相関を示し、リスク知覚は速度調節と関連を示した。ハザード知覚には経験効果が明らかとなり、経験者の方がハザードを適切に知覚していた。対人コミュニケーション行動については、フィンランド、ドイツ、日本の国際比較を実施した。日本は他の2国よりも理解度が低かった。また、日本では、若年者の方が中高齢者よりも理解度が高かった。ドイツやフィンランドでは、中高齢者の場合、男性の方が女性よりも理解度が高かった。回答への自信度について日本のドライバーの方が低かった。非公式身振り合図について、日本のドライバーはその必要性を低く評価していた。自動車専用道路での走行実験を行い、車間距離を測定した。速度が高くなれば車間距離が増加するが車間時間の指標で差は見られない。ドライバーの車間距離は異なる測定サンプル間で相関を示した。これらの研究は今後の国際比較研究の基礎となるものである。
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