平成8年度には発電プラントに於ける補助ボイラーの手動起動停止について操作過程の分析を基に新たなマニュアルを作成した。ここでは、各操作手順の意味を理解するために、系の全体像が把握可能な付属図面の重要性が指摘された。 平成9年度には(1つの操作で)自動起動するサブシステム(同じく補助ボイラ)について、トラブル発生時の対応を理解することを目指したマニュアルを試作した。自動化が高度化した装置では、新たに起動シーケンス・ロジック、各種のインターロック、装置内の自動制御ループのモード・チェンジなど、ディジタル信号による論理制御系統が付加されている。これらの論理制御系統と、従来の装置内の燃料・水・蒸気などの流れを示す系統を関連づけることが、システム理解(特にトラブル対応)では重要なポイントとなった。 同様に、さらに高度に自動化された航空機のトラブル対応時の例として、中華航空機事故事報告書(1994年、名古屋空港)の中の自動制御モードの設定手順を解析した。飛行が計画通り順調に推移しているとき、各種の制約条件等が順次整えられる時点でモードの選択が行われる。従って、複雑な条件をほとんど意識せずに操作が可能である。このことは、意図に反した非定常状態に対処する方法を学習する機会が日常業務の中にはほとんど存在せず、またその必要性を意識する機会も非常に少なくなる。 このように、自動化が進むほど操作経験の中からシステムの構造を把握し難い状態があり、マニュアルの中に全体構造を把握しやすい表現を用意する必要が出てきている。実プラントの初心者および熟練者に、試作したマニュアルの評価を依頼し、教育訓練資料としての有効性を確認した。
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