経営管理者の社会意識を、意思決定行動に中心をおいて明らかにすることが、この研究の課題であった。そして、特に集団的意思決定の内容を解明することを目的とした。 企業の意思決定を、「決定」と「制御」という二つの概念で分析した。決定様式は求心的性格を強く持っていた。いくつかの意見をその正当性を主張して相互に戦わせるという方式とは異なった展開と収束の様式を示した。制御の方式は、「規範-再設定」という類型に分類できる。ある指示、命令が存在して、それに厳密にあわせるという方法ではなく、目標を共有しながら、それらの実現に主な基準をおく。制御が決定の原点に戻すという方向ではなく、反対に出発点から前方へ発展させていくという形で行われる。 日本企業の集団的意思決定の本質は二点である。第一は、決定の「小集団の存在」である。決定が合議制で行われること、そして決定主体も集団的要素を持っている。集団としてのまとまりは、あくまで中心リーダーの下で構成される。そのリーダーの性格が、役職上のリーダーである場合と、テクノクラートの場合とがある。第二は、「決定の長い連鎖」である。日本企業の意思決定には、多くの人、役職にある人だけではなく地位の下の人が関係する。決定参加のきっかけとしての指示は上位のポジションからもたらされるが、その後は決定過程に関与している。こうして、決定権を持つ地位にある人同士のつながり、あるいは相互作用が行われる。指示命令系統という縦のオーバーラップである。そして、横の間でのオーバーラップつまり、職能で分かれた部署同士の相互関係、連結関係も日常的にある。このことは、指示、調整、同意など最終決定に至るまでの長い連鎖が存在するために可能となる。また、このオーバーラップの形成は、組織の目標達成という共有された理念があることが前提条件となる。
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