平成8年度はアルコール依存症からの脱却行動としての断酒会活動に力点をおいた研究を行ったので、平成9年度は薬物乱用の実態に関する研究を中心に行った。その際、われわれの分析の中心は、薬物犯罪の全国動向と京都府における実態とを比較検討することにある。 最近の薬物犯罪の全国的動向の特徴は2つある。その第1は覚醒剤濫用が急増していることである。昭和60年をピークに、減少しつつあった検挙人員が平成7年度に大幅増加傾向を示して注目された。そのうち約半数近くが暴力団がらみで起きている。同じく約半数近くが20代の若者によるものである。さらに19歳以下の少年層に濫用の大幅増加がみられた。第2の特徴は、来日外国人による薬物事犯が顕著な点である。覚醒剤事犯にはフィリピン人、麻薬等事犯にはイラン人等がそれぞれ多く関係している。 このような全国的動向を最近の京都府の薬物濫用の動向と比較してみよう。覚醒剤濫用をみると、全国では増加傾向にあるのに対して、京都では横ばいないし減少傾向(400人〜500人のゾーン)にある。ただし、それらの事犯の半数近くに暴力団がからんでいる点、および少年事犯が増加傾向にある点などは全国動向と一致している。他方、来日外国人による事犯は東京や大阪などのような巨大都市ほど多くはない。
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