本年度研究の最大の知見は、25才〜39才までの若壮年層の未婚率が、男性と女性とでは、地域特性によって差があることが判明したことことである。すなわち、女性では、若壮年層の未婚率は、大都市→地方都市→近郊農村→中山間地→山間地の順で高く、中山間地や山間地では、30才代の未婚の女性は極端に少なくなる。一方男性の未婚率は、大都市→山間地→中山間地→地方都市→近郊農村の順で高く女性とは異なる未婚率の分布を示す。その結果、山間地、中山間地での「花嫁不足問題」は、単に結婚できない男性が多いということだけでなく、30代の未婚の女性が極端に少ないことによって発生していることが判明した。そして、この山間地、中山間地の未婚女性の多くが、大都市部に滞留し、大都市部の未婚率を押し上げていることが判明した。 本年度研究の第二の知見としては、農業経営を伴う農家後継者対策にとって婿養子の役割が非常に重要であることが、判明した。現在農水省では非農家からの新規就農者に注目し、その誘導政策を行っているが、あまり婿養子の機能には気が付いていない。新規就農者は、独身者でも既婚者でも可能であるが、婿養子は独身者のみが対象となる制約がある。しかし、新規農者の多くが、就農後、農業経営基盤を確立、安定化させることで精一杯であるのに対し、婿養子は、養子先の『家』の信用を背景に、農村生活にも馴みやすく、農業経営においても、新しい事業展開のための投資資金や人的資源も得られやすく、新しい企業的農業経営に適合的であることが、多くの調査地から明らかになった。
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