研究概要 |
本研究において、私達はそれぞれ異なった埋論的立場から、私達の掲げた主題にアプローチした. 新保は、2つのアプローチを採択した。第一は、システム理論を使って、農村社会の変容と存続の過程を説明しようとした。すなわち,農産物の国際市場への開放・減反政策等を『環境からの農村へのインプット』と概念化する。これに対応するアウトプットとして機械化の促進・農外就業の増大等を考える。このような新しい社会的均衡の中で、伝統的な社会的制度体がどのような機能的要件を果たしているかを、聞き取りにより検討した。第二は、農協の特定地区の組合員全戸を対象として、質問票にもとづく面接調査を実施した。1996年度には秋田県K市S地区で399戸、1997年度にはA地区で389戸、1998年度にはM地区で423戸の協力を得ることができた。この方法で得られた統計の詳細な分析は他日を期している。 松田は、農民の生活時間を生理的行動・生産行動・消費行動(存続面)に3分し、そのおのおのが環境の変容によってどのように相互に影響しあうか(変動面)を、数量的に検証した。具体的には,1950年代と1980年代において、農村の生産活動の変容が、他の2つの側面にどのような変容を与えるかを数量的に精緻に辿った。 和崎は、民俗(存続面)と風俗(変動面)という2つのキイ概念を駆使し、京都の左大文字の事例を中心に、先祖祭紀の祭りがどのような組織に担われて存続してきたか,そして、大文字「祭り」を核としたアソシエーション複合が、どのように新しい風俗を生み出しつつも民俗を存続させているかを検証した。 なお、私遠が扱った事象の理論化という作業は現在進行中であり、近い将来に専門的な報告書として上梓することを目標に努力している。
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