本研究は、日中戦争〜太平洋戦争期における日本の政治精造を明らかにするために、新たなアプローチを可能とする基礎的データの収集を行ったものである。この問題を明らかにするためには、第一段階として、さまざまなレベルにおける政治的・社会的意志決定過程をの特徴を、実証的に明らかにする必要がある。このようなアプローチによる分析は実際には容易ではないが、その要因の一つは、研究の基礎となる史料、とりわけ地方における政策の浸透や動員の実態を具体的に明らかにできる史料がきわめて少ないことにある。 本研究は、そうした現状をふまえて、大政翼賛会成立以後の政策決定にかかわる史料と、大政翼賛会地方支部の関する史料を収集し、情報化することを主眼としたものである。この報告書では、最も主要な成果として、大政翼賛会福岡県支部の機関紙と、大政翼賛会福岡県田川支部関係文書の紹介と若干の分析を行うこととする。 大政翼賛会福岡県支部機関紙(『翼賛福岡』、『時報』、『大政翼賛』)は、今回、新たに発見されたものであり、学界未発表のものである。大政翼賛会地方支部はその多くが機関紙を発行していたと思われるが、紹介された例はほとんどない。地方支部関係の一次史料がまとまった文書群として保存されている例は、機関紙の場合よりもさらに稀である。かなりの分量にのぼる大政翼賛会田川支部関係史料は貴重なものである。この史料はこれまで知られていなかったわけではないが、本研究によってはじめて目録が作成され、全体像を明らかにすることができた。これによって、地方支部の具体的な組織構成や、儀式化された行事を通しての動員の実態を知ることができると同時に、大政翼賛会地方支部が実質的には食料供出や貯蓄強制などのシステムとして機能していたことを明らかにできる。
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